顔面神経麻痺の後遺症について
慢性期後遺症でみられる3つの症状
顔面神経まひ(ベルまひ、ハント症候群など)からの回復期に、《顔のゆがみ》や《こわばり》、《意に反して目や口が動く》といった症状がみられることがあります。これが《顔面神経まひの後遺症》です。
おもな症状は下記の3つです。
①筋肉の動きがよわい《筋力低下・不全まひ》
②神経の再生プロセスでのエラーにより筋肉が連動してしまう《病的共同運動》
③筋肉が硬くなってこわばってしまう《拘縮》
筋力低下・不全まひについて
顔面神経麻痺を発症すると表情筋はしばらく動かなくなります。神経が再生すると筋肉も動き始めますが、しばらく動いていなかった筋肉はやせて筋力がおちている状態です。筋力は徐々に回復していきますが、もとの筋力まで回復しなかった場合は筋力低下となります。また、神経の再生がうまくいかない場合まひが残ってしまうこともあります。完全なまひがのこることもありますが、少しうごくが反対側より弱いという《不全まひ》の状態になるパターンが多くみられます。
病的共同運動について
5本ある顔面神経が傷ついて麻痺が起こります。その後、耳のうしろの5本が合わさった付け根から神経が再生してきますが、このとき回復する神経が行き先を間違えたり、神経同士の連絡ができることがあります。この回復プロセスのエラーによって病的共同運動が起こります。よくみられる症状は、食事をしたり口を動かすと目が閉じてしまう、目を閉じると口もとが動いてしまうなどの動きです。ベル麻痺では約10%程度の方にみられます。
拘縮について
顔の筋肉のうち、目や口の周りにある表情筋は目を守ったり食事をとるなど体にとって特に大切な動きをしています。これらの筋肉を早く回復させようと脳からの強い指令がでるため、表情筋が常に緊張した状態となり、収縮して硬くなります。これが顔面拘縮です。自分で感じる症状は、顔のこわばりや引きつれ、ほうれい線が深くなる、目が細くなるなどです。
後遺症の予防
後遺症を予防するため、麻痺の早期からマッサージ、ストレッチ、鏡を使って動きを再学習する《ミラーフィードバック療法》などのリハビリテーションがおこなわれます。しかめ面や百面相など強い筋肉の動きを避けることも重要です。
発症から4カ月たって《慢性期》に入ってからも、症状が悪化しないよう、マッサージやストレッチなど根気良くリハビリテーションを続けることが大切です。
発症から1〜1.5年が経過すると、リハビリテーションによる回復の見込みが少なくなるため、後遺症に対する治療をスタートします。
後遺症の治療
後遺症に対する治療には《手術療法》と《ボトックス治療》があります。
手術療法は症状に応じてさまざまな方法がありますが、一例としてまぶたの左右差であれば眉の上を切開して引き上げる《眉毛挙上(固定)術》、リフトアップ手術を応用した《前額リフト》、目の周りの筋肉の拘縮で細くなった目に対する《挙筋前転法》、まぶたのたるみ取りを応用した《眉毛下切開法》《上眼瞼徐皺術》などがあげられます。
筋肉の動きをよわめる薬剤である《ボツリヌストキシン》を注射して自然な表情をとりもどす《ボトックス治療》は効果の持続が3〜4か月程度であるため、治療を繰り返し行う必要があります。治療効果を上げるために自宅でできるリハビリテーションについてもご案内しています。
顔のクリニック金沢では表情筋の動きを顔の治療を専門とする《形成外科専門医》が評価し、ボツリヌストキシンの投与量や投与する部位を決定します。多く投与してしまうと戻すことができないため、初期は1,2回のタッチアップ(追加、修正)により表情のバランスを調整します(下図は投与部位の例)。通常まずは3クール受けていただき、写真による効果判定をおこないます。その後も希望される場合にはひきつづき治療をおこないます(いずれも自由診療)。
顔面神経まひの後遺症に対する治療を希望される場合、治療の経過などについての情報いただけると治療をスムーズにはじめることができますので、まずは顔面神経麻痺の治療を受けている主治医にご相談いただき、紹介状をご持参のうえ診察におこしください。お一人おひとりの症状にあわせて治療のご提案をいたします。
お問い合わせ・ご予約
TEL 076-239-0039
10:00 a.m. ~ 18:00 p.m.
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執筆
山下 明子 医師
YAMASHITA, Akiko
顔のクリニック金沢 院長
経歴:
岐阜県出身
平成15年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業
同年 金沢医科大学形成外科入局
平成18年 産業医科大学形成外科留学
平成26年 金沢大学皮膚科形成外科診療班
平成29年 顔のクリニック金沢専任医師
形成外科 専門医
日本美容外科学会(JSAPS) 専門医
金沢医科大学形成外科学 非常勤講師
目の下のヒアルロン酸とタッチアップ
目の下の「くま」や「ふくらみ」の切らない治療に使われるのがヒアルロン酸です。ダウンタイムがほとんどなく手軽に受けられることが利点です。ヒアルロン酸治療によって希望した結果が得られなくても、時間がたてば分解されてなくなります。また、どうしても気になる場合にはタッチアップ(修正)が可能です。ヒアルロン酸治療のタッチアップについて説明します。
タッチアップの流れ
1.ヒアルロン酸を分解する「ヒアルロニダーゼ」を注射します。
2.注射後1~2週目にヒアルロニダーゼ注射の効果を判定します。
3.「くま」や「ふくらみ」の治療を希望される場合には治療のご提案をいたします。
ヒアルロニダーゼについて
「ヒアルロニダーゼ」はヒアルロン酸を分解する酵素です。
いくつかの製剤が販売されていますが、大きく分けるとウシやヒツジなど「動物由来」の製剤と、「ヒト由来」の製剤があります。
動物由来のヒアルロニダーゼは1アンプル当たりの容量が多く分解力も高いのですが、アレルギーの可能性があるため注射の前にアレルギー検査を行っています。
ヒト由来のヒアルロニダーゼ「Hylenex(ヒレネックス)」は、米国FDAで認可された製剤で、アレルギーが少なく安全性が高いと考えられています。アレルギーが心配な方や、安全性を気にされる方には「Hylenex(ヒレネックス)」をご案内しています。
ヒアルロニダーゼを150〜200単位(1〜1.5ml)を注射し、1−2週後に効果を判定します。ご希望に応じて追加の注射が可能です。ヒアルロニダーゼを注射すると、まわりに浸透してヒアルロン酸を分解するため、注入されているヒアルロン酸の一部分だけを分解することはできません。また、ヒアルロン酸が多い場合には、1回ですべてのヒアルロン酸が分解されない場合もあります。自分の体にもともとあるヒアルロン酸は、毎日大量に作られて分解されるというサイクルを繰り返しているため、ヒアルロニダーゼの注射でなくなってしまうことはありません。
《タッチアップの例》
■ヒアルロン酸が透けて見える
目の下の皮膚が薄い方ではヒアルロン酸が透けて見えることがあります。ヒアルロン酸自体は無色透明ですが、皮膚を通して見た場合に青白く見えるため、「青くま」のように見えてしまう場合があります。コンシーラーやファンデーションでカバーできるので、お化粧をすれば気にならないという方では問題ありませんが、普段はあまりメイクしないなどで気になる場合はタッチアップが可能です。
■目の下が全体に腫れぼったくなった
目の下のくまやふくらみをヒアルロン酸だけで治療するのには限界があります。くまやふくらみが多少残る程度をゴールに治療することをおすすめしています。注入量が多くなると、目の下が全体にふくれたような形になる場合がありますので、腫れぼったさが気になるようであればタッチアップを行います。
ヒアルロニダーゼによる治療のあと
注射後1−2週以降、目の下のくまやふくらみの治療を受けていただくことが可能です。再度ヒアルロン酸で治療する場合は前回より少ない量で、多少ふくらみやくまが残る程度にとどめることをおすすめします。また、手術治療では目の下のふくらみやたるみなど、気になる症状にあわせたオーダーメイドのプランニングをご提案いたします。腫れなどのダウンタイムが許容できる方では、より自然で若々しい目元を再現できる手術治療も良い選択です。
目の下のくま、ふくらみについて 詳しく見る
目の下のくま、ふくらみー手術以外の治療ー 詳しく見る
目の下のくま、ふくらみー手術ー 詳しく見る
治療にかかる費用
ヒアルロニダーゼ注射(ヒアルロン酸分解注射)
■Hyaluronidase(ヒアルロニダーゼ、ヒツジ由来、1アンプル1500単位)
60,000円(アレルギーテスト費用5,000円を含む)
■Hylenex(ヒレネックス、ヒト由来、1アンプル150単位)
60,000円
初診当日にヒアルロニダーゼ注射を希望される場合は、ご予約の際にお伝えください。
お問い合わせ・ご予約(診察の予約は電話受付のみ)
TEL 076-239-0039
10:00 a.m. ~ 18:00 p.m.(木、日除く)
監修
山下 明子 医師
YAMASHITA, Akiko
顔のクリニック金沢 院長
ジュビダームビスタ®ボルベラ XC
ジュビダームビスタ®ボルベラ XC
6月3日に「ジュビダームビスタ®ボルベラXC」が日本でも発売されました。
やわらかくなじみが良いため唇や目元を若々しく整えることができる「長期間持続型」のヒアルロン酸です。北陸で最も早くアラガン・ジャパンが供給する「ジュビダームビスタ®ボリフト XC」正規品をお試しいただけます。
「顔のクリニック金沢」では、ヒアルロン酸治療を希望するすべての方に「プランシート」をおつくりしています。それぞれのヒアルロン酸製剤の特徴をご説明し、「最適なヒアルロン酸製剤」を選ぶお手伝いをいたします。また、すべてのヒアルロン酸の製品名をお示しし、実際に使用するヒアルロン酸をお手に取っていただいてから使用しています。
これまでご好評いただいている長持ちタイプのヒアルロン酸、「ボリューマ XC」「ボリフトXC」や「ボツリヌス治療」を組み合わせてお顔全体のしわ、たるみを改善させる「トータルフェイシャルトリートメント」のプランニングも可能ですのでご希望の方は予約の際にお問い合わせください。
・ジュビダームビスタ®ボルベラ(アラガン社)
唇、目のまわり(12カ月持続)
1本(1ml) 96,000円
・ジュビダームビスタ®ボリフト(アラガン社)
ほうれい線、マリオネットラインなど(12~18カ月持続)
1本(1ml) 96,000円
・ジュビダームビスタ®ボリューマ(アラガン社)
顎、頬、額、こめかみなど(約2年持続)
1本(1ml) 96,000円
・ボトックスビスタ®(アラガン社)
眉間、目尻などのしわ(約3〜4か月持続)
1か所 40,000円
※表示価格はすべて税抜き価格です(別途消費税がかかります)。
※プランシートの作成には別途費用はかかりません(診察料に含まれています)。
お問い合わせ・ご予約
TEL 076-239-0039 (クリニック予約)
10:00 a.m. ~ 18:00 p.m.
監修
山下 明子 医師
YAMASHITA, Akiko
顔のクリニック金沢 院長