顔のクリニック金沢

COLUMN

コラム

「最も良いフェイスリフト」の選び方

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フェイスリフトとは?

《フェイスリフト》は顔のリフトアップ治療です。

 

主にメスを使った切る治療を指しますが、最近は切らないリフトアップ治療もさかんに行われています。100年以上前から行われているフェイスリフト歴史と選び方について説明します。

 

 

 

 

創生期

20世紀のはじめに最初のフェイスリフトがおこなわれました。

 

その内容は単純に耳の前やもみあげなどを切開して皮膚を引っ張るというものでした。しかし、皮膚を引っ張るだけでは効果が続かないばかりか、目立つ傷跡、ひきつったような不自然な顔、耳の変形などが目立っていしまい、自然な若返りにはまったく向かないことがわかってきました。

 

これまでも多くの美容形成外科医がこの点に警鐘を鳴らしています。

“skin is intended to serve a covering function, not supporting one”

Timothy J. Marten, 1997

「皮膚は表面をおおうもので、引っ張り上げるためのものではない」

 

このように欠点ばかりで決して満足していただけることのない《皮膚のみ》のフェイスリフト、いまではすっかり行われることもなくなりましたと言いたいところですが、残念ながら「1〜2時間で終わり腫れない」「費用が手頃」「人に気付かれない」といったうたい文句で手軽さを強調し、「プチフェイスリフト」などと称してごく最近まで行われていたようです。

 

 

 

 

SMASを使ったフェイスリフト

1970年代に《顔の筋膜》に注目したフェイスリフトが開発されました。

表情筋とつながっている筋膜《SMAS(スマス)》を引き上げる術式です。SMASは皮下脂肪の下にあるしっかりした筋膜で、これを引き上げることで顔のたるみやしわを改善させることができます。持続性は5〜10年、平均8年程度です。

SMASを引き上げて固定したあとにオーバーラップして余っている皮膚だけを切除するところが重要なポイントです。耳の曲線に沿ってていねいに切開し、皮膚をつよく引っ張り上げなければ目立つ傷跡や変形の心配はありません。SMASを切除して縫い縮める《SMASリフト》やSMASに糸をかけて引き上げる《MACS lift》などは今も行われています。SMASの上での剝離、引き上げと皮膚の切除、縫合などで3〜4時間かかります。40代〜50代前半でフェイスラインの軽いたるみがある方に適した方法です。

 

 

 

 

複雑な術式

1980年代には、フェイスラインだけでなくほうれい線まで改善させるため多くの工夫が取り入れられました。

 

SMASを広い範囲で剝離したりSMASの裏側まで剝離する方法、SMASの下でリガメント(靱帯)を切り離して可動性を大きくする方法、さらに深く骨の上まで剝離して引き上げる方法などがあります。これらの方法は《リガメント法》《deep plane法》と呼ばれています。ほうれい線をよりパワフルに引き上げることができますが、顔面神経の近くをさわるため神経損傷のリスクが高くなることや繰り返し行えないことが欠点です。

 

【豆知識】リガメントの処理について

《リガメント法》と呼ばれている方法には下記の3つがあります。単に《リガメント処理》とされている場合には、このうちのどれに該当するかを確認する必要があります。上記の〝複雑な術式〟として行われるリガメント法は③に該当します。

①SMASの上でリガメントを切り離す

②SMASの上で切り離したリガメントをSMASに縫い付ける

③SMASの下でもリガメントを切り離すことでさらに可動性を大きくする

 

 

 

 

現代の標準術式

1990年代にSMASを切除し引き上げる《lateral SMASectomy》が考案され、安全で効果的な方法として普及しました。《SMASリフト》を改良したもので、顔面神経のない安全なところでSMASを切除して引き上げるとてもシンプルな方法です。長持ちすること、10年間隔で繰り返し受けられること、顔面神経を傷つける可能性が非常に低いことなど利点が多く、今では世界中で多くの美容形成外科医が採用している《現代の標準術式》といえます。

 

実際にはお一人おひとりのたるみの状態、希望などを考慮したオーダーメイド治療となることが多いため個人差はありますが、SMASの処理、引き上げと皮膚の切除、縫合、個別のオプションなどを含めていねいに行うと4-6時間かかります。同時におこなえるオプションとしては、首のたるみを横に引き上げる《ネックリフト》あご下で筋肉を引き寄せて首のたるみをとる《anterior platisma plasty(筋肉しばり)》、失われたボリュームをおぎなう《脂肪注入》、口の横のふくらみを減量する《バッカルファット切除》などがあります。

 

この方法、前述の《複雑な術式》に比べるとほうれい線のリフトアップ効果が出にくいのが欠点でした。これを補うため《脂肪注入(移植)》を同時に行う《Lift-and-fill face lift(引き上げと注入によるフェイスリフト)》が最近の論文でも多く取り上げられています。ほうれい線だけでなく口の横からあごにかけての《マリオネットライン》、年齢によってボリュームが失われる《頬》、頬の中央のくぼみ《ミッドチークグルーブ(ゴルゴ線》、《こめかみ》、《額》などにやわらかいボリュームを補ってあげることでやわらかく自然なフェイスライン取り戻すという新たなアプローチです。

 

 

 

 

切らないリフトアップ

21世紀に入ると切らないリフトアップ治療が脚光を浴びます。

 

最も手軽に受けられるリフトアップは注射によるものです。《ヒアルロン酸》や《ボトックス》がつかわれ、ごく軽いたるみや大きな変化を望まない場合に向いています。腫れなどのダウンタイムが短いかほとんどないこと、変化がマイルドなため治療を受けたことに気付かれにくいことが利点です。持続性はヒアルロン酸が半年〜数年、ボトックスは3〜4か月です。

糸をつかった糸リフト、「スレッドリフト」もアジア圏を中心に行われています。溶ける糸、溶けない糸、糸の入れ方など非常に多くの方法があります。持続期間についてはあまり長くなく、おおむね6か月でもとにもどるという研究データがあります。よい形をキープしようとするとかなりの費用がかかってしまうため「患者さんにメリットがない」と糸リフトを採用していないクリニックも多くあります。一方で糸の種類や入れ方、技術によって持続させることができると謳うクリニックもあります。受ける側としては何を信じればよいかわかりづらいかもしれませんが、少なくとも「効果が半永久」「5年以上持続する」といった文言に誠実さは感じられません。

 

機械を使ったリフトアップ治療には、皮膚をターゲットにするものはラジオ波による《RF》、レーザーによる《リフトアップレーザー》があります。また、SMASをターゲットにするものは超音波による《HIFU(ハイフ)》があります。いずれも効果や持続は手術におよびませんが、軽いたるみや大きな変化を望まない場合には有効です。米国行政機関《FDA》が「安全でリフトアップ効果がある」と認めた機種はRFの《サーマクール》とHIFUの《ウルセラ(下図)》です。いずれもダウンタイムがほとんどなくすぐにメイクできることも大きなメリットです。持続期間は6〜12か月です。

 

切らないリフトアップ治療は顔の特徴にあわせてさまざまな治療を組み合わせることで相乗効果が期待できます。ただし持続性はどれも数ヶ月〜長くても数年と手術に比べて短いため、効果を長く実感するためには定期的にメンテナンスが必要です。また、それぞれの治療の特徴を良く理解していればリフトアップだけでなくしわ、肌質、毛穴の開きの改善などの《おまけの効果》を得ることもできます。

 

 

 

 

最も良いフェイスリフト

それぞれに長所短所があり、人によって求める効果や受け入れられるダウンタイムはちがうため《最も良いフェイスリフト》を一つに決めることはできません。それぞれの特徴をよく理解したうえで、たくさんの方法からぜひご自身に合う方法を選んでください。

 

クリニックで相談する際のポイントとしては、まず気になっているところや希望をしっかり担当医にお伝えください。治療法についての提案を受けたら、それぞれの治療法についてダウンタイムの長さや程度、効果と持続期間、費用などをよくご検討ください。自然で元気に若々しく見えるフェイスラインを取り戻し喜んでいただくために、あなたにとっての《最も良いフェイスリフト》を選んでください。

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執筆

山下 明子 医師
YAMASHITA, Akiko

顔のクリニック金沢 院長

経歴:

岐阜県出身
平成15年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業
同年 金沢医科大学形成外科入局
平成18年 産業医科大学形成外科留学
平成26年 金沢大学皮膚科形成外科診療班
平成29年 顔のクリニック金沢専任医師

形成外科 専門医
日本美容外科学会(JSAPS) 専門医
金沢医科大学形成外科学 非常勤講師